「レム睡眠」で「見る夢」はリアルで感情を揺さぶられる! 理由は脳の活動にあった

人間の睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のふたつに分けられます。レム睡眠のときに見る夢は覚えていることが多く、またリアルだといわれます。

その秘密はレム睡眠時の脳の活動にあります。

レム睡眠時の夢の特徴

かつては、レム睡眠時には夢を見るが、ノンレム睡眠時には夢を見ないといわれました。現在ではそれは間違いで、ノンレム睡眠時にも夢を見ることが分かっています。

ただし、ノンレム睡眠中の人を無理矢理に起こして(覚醒させて)どんな夢を見たかを聞いてみると、そもそも覚えていないことが多く、また断片的なイメージのものだったりするなど、「レム睡眠時に見る夢」とは明らかに性質が違っています。

レム睡眠時に見る夢には、

  • 覚醒直後に覚えていることが多い
  • リアルに感じられる/感情を揺さぶられる
  • 視覚イメージが強烈
  • ビビッド(vivid)である
  • ストーリー性が高い

といった特徴があります。覚醒後に強い恐怖を感じる悪夢などは、まさにレム睡眠中に見る夢の代表格といえます。

レム睡眠時の夢の特徴は脳の活動による

レム睡眠時に見る夢が視覚的で、リアルで、ストーリー性が高く、感情を揺さぶるものであるのは、レム睡眠の際に「脳の特定の部位」が活動レベルを上げていることが原因と考えられています。

脳の後頭葉の「第一次視覚野」の活動レベルが低下するのに、「高次視覚野」の活動レベルは上がる

第一次視覚野」は眼球につながる視神経から視覚情報を受け取る部位です。

ここでいったん情報を受け取り、次に「高次視覚野」に情報を送って視覚情報を再構成するのです。高次視覚野は受け取ったデータを「見えているもの」(視覚認知)にする作業を行う部位です。

レム睡眠中はまぶたは閉じられていますし、感覚系が遮断されているので脳に視覚情報は入ってきません。そのため第一次視覚野の活動は低レベルなのですが、なぜか高次視覚野の活動レベルは上がるのです。

つまり、レム睡眠中には勝手に何らかの視覚情報の再構成が活発に行われているわけです。そのためレム睡眠中の夢は本当に見ているもののようにリアルに感じられるのです。

「大脳辺縁系」の活動レベルが上がる

特筆すべきは「海馬」と「扁桃体(へんとうたい)」の活動レベルが上がることです。

海馬は「陳述記憶」に関与する部位。

陳述記憶というのは、イメージや言葉で内容を表すことのできる記憶のことです。意味付が行え、エピソードとして記憶することには海馬が重要な働きをします。レム睡眠の夢にストーリー性が豊かなことが多いのは、海馬が活発に働いているからだと考えられます。

扁桃体は「感情」に関与する部位です。

レム睡眠時の夢に感情が揺さぶられるような体験をするのは、この扁桃体の活動レベルが上がるからだと考えられるのです。

「背外側前頭前野」の活動レベルが下がる

背外側前頭前野」は論理的におかしなことがないかをチェックする部位で、論理的な思考をつかさどっています。

しかし、レム睡眠時には活動レベルが下がり、この機能が低下します。夢の中でつじつまの合わないことが起こるのは、背外側前頭前野のチェック機構が働かないためと考えられています。

このようにレム睡眠中の夢の特徴は、レム睡眠中の脳の活動によってもたらされるのです。しかしなぜ夢を見るのか、夢を見ないといけない理由、なぜヒトに夢を見る仕組みが備わっているのかについてはまだ不明です。

その説明のひとつに「現実でのシミュレーションをしている」という仮説があります。

現実に起こる怖い場面、自分が避けたい場面を頭の中で構築して、その場面のシミュレーションを行い、現実世界で受けるショックに備えている、というのです。

しかし、この仮説が正しいかどうかはまだ分かっていません。やがて神経科学的に夢の仕組みが解明される日が来るでしょう。しかし、何もかも分かってしまうのはちょっと寂しいかもしれませんね。

(高橋モータース@dcp)

コメント

タイトルとURLをコピーしました