「ショートスリーパー」とは? 睡眠時間が短くて済むのは「遺伝子が決定している」と考えられる

1日8時間の睡眠を取ると人生の1/3は寝ていることになります。

ずっと起きていられたら、もっといろんなことができるのにと睡眠時間を削る人もいらっしゃいますが、健康によくありませんね。

ところが、短い睡眠時間でも平気な「ショートスリーパー(short sleeper)」なる人がいるという話があります。ショートスリーパーは本当にいるのでしょうか。

「ショートスリーパー」って何?

一般に「ショートスリーパー」とは、短い時間しか寝なくても健康に影響がない人のことを指し、日本語では「短眠者」ともいわれます。

ただし、無理をして睡眠時間を短くしている人をショートスリーパーとは呼びません

あくまでも自然に睡眠時間が短く、それでも健康に暮らせる人のことを指します。

逆が「ロングスリーパーlong sleeper)」で、こちらは長時間眠らないと健康を保てない人のことを指します。

成人の1%ほどが「ショートスリーパー」「ロングスリーパー」といわれますが、その実態はまだよく分かっていません。

「ショートスリーパー」は本当にいるのか?

エジソンやナポレオンなどがショートスリーパーだった、などといわれることがありますが、本当にそうだったのかは不明です。

業務に忙しくて睡眠時間を削るしかなく、それに慣れてしまったため「短い睡眠時間でも平気」だっただけではないのか、という推測だって成り立ちますからね。

ではショートスリーパーは本当にいるのでしょうか?

2009年『Science』に発表されたカリフォルニア大学のYing-Hui Fu博士らの研究では、1日に6時間の睡眠で過ごせる母娘の遺伝子を検査し「DEC2」という遺伝子に非常にまれな変異を見つけています。

同様に「DEC2」に変異を加えたマウスで調べてみると、ほかのマウスよりも約1.2時間、1日の覚醒時間が伸びました。

DEC2遺伝子が哺乳類の概日リズムを制御しているのではないか、というわけです。

さらに、2018年3月には「DEC2 modulates orexin expression and regulates sleep.(DEC2遺伝子はオレキシンの発現を調整し眠りを制御する)」という論文を発表。

DEC2遺伝子に変異が生じると「オレキシン」が増加する、と発表しています。

脳内物質「オレキシン」には覚醒を維持する機能があります。オレキシンの分泌が不足すると覚醒が維持できなくなり、突然眠り出したりします。これが「ナルコレプシー」という病気です。

ナルコレプシーは以前は謎の病気でしたが、現在では「何らかの原因でオレキシンの分泌が不足するために起こる」と分かっており、オレキシンを補うことで症状を著しく緩和できるようになっています。

ちなみに、この「オレキシン」を世界で初めて発見したのは、『筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構』(略称「IIIS」)の機構長である柳沢正史博士、副機構長である櫻井武博士のお二人です。

Ying-Hui Fu博士らの研究対象になった「睡眠時間が1晩に6時間でも健康に過ごせる」母娘を「ショートスリーパー」と呼べるのなら、ショートスリーパーは「いる」ことになります。

このように、ショートスリーパーが普通の人より短い睡眠時間でも平気なのは、遺伝的な特質によるもののようなのです。

また、その人口比率も非常に低いと考えられます。

ですから「あなたもショートスリーパーになれる!」なんて話は眉唾だと考えなければなりません。

必要な睡眠時間は人それぞれ違います

無理をして睡眠時間を削って健康を害することになったら本末転倒です。くれぐれも「ショートスリーパーになろう」なんて話にはだまされないようにしてください。

⇒データ出典:『Science』「The Transcriptional Repressor DEC2 Regulates Sleep Length in Mammals」
http://science.sciencemag.org/content/325/5942/866

⇒データ出典:「DEC2 modulates orexin expression and regulates sleep.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29531056

(高橋モータース@dcp)

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