「女性オルガズム障害」とは?

セックスをしてもオルガズムを得られない、いわゆる「イケない」という女性は実はけっこういらっしゃいます。このオルガズムを得られないというのは、精神疾患mental disorder)の一つにも挙げられています。

「女性オルガズム障害」とは?

「女性オルガズム障害(Female Orgasmic Disorder)」は、オルガズムを得ることが難しい、またオルガズム感覚がひどく低下してしまうことが特徴です。

たとえば、夫婦仲も良く、以前はオルガズムを得られていた奥さんが、なぜかオルガズムを得られなくなったといった症状が現れます。また、一度もオルガズムを得られたことがないという人もいて、この場合も女性オルガズム障害の可能性があります。

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によると、女性オルガズム障害の診断基準は以下のようになっています。

●女性オルガズム障害の診断基準
A.以下の症状のいずれかが存在し、性行為において(特定の状況、または全般方ではあらゆる状況で)、ほとんどいつも、または常に(約75-100%)経験される。

(1)オルガズムの著しい遅延、著しい低頻度、または欠如
(2)オルガズムの感覚の著しい強度低下

B.基準Aの症状は、少なくとも6カ月は持続している。
C.基準Aの症状は、その人に臨床的に意味のある苦痛を引き起こしている。
D.その性機能不全は、性関連以外の精神疾患、または重篤な対人関係上の苦痛(例:パートナーからの暴力)、または他の意味のあるストレス因の影響ではうまく説明されないし、物質・医薬品または他の医学的疾患の作用によるものではない。

▼いずれかを特定せよ

生来型:その障害は、その人が性的活動を始めたときから存在している。
獲得型:その障害は、比較的正常な性機能の期間の後に発症した。

▼いずれかを特定せよ
全般型:ある特定の刺激、状況、または相手に限られない。
状況型:ある特定の刺激、状況、または相手の場合にのみ起こる。

▼該当すれば特定せよ
いかなる状況においてもオルガズムを経験したことがない。

▼現在の重症度を特定せよ
軽度:基準Aの症状についての軽度の苦痛の証拠がある。
中等度:基準Aの症状について中等度の苦痛の証拠がある。
重度:基準Aの症状について重度または極度の苦痛の証拠がある。

⇒引用元:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』株式会社医学書院,2016年2月1日第1版第5刷発行,pp421-422「女性オルガズム障害」

ポイントは、オルガズムを得られない・その感じ方が著しく低下するという症状、本人がその症状を苦痛に感じている、という点です。症状があっても本人が苦痛でないなら、それは精神疾患ではありません

どんな不都合があっても悩んでいないなら悩みではない、というのと同じです。

性的な体験をし始めた頃から症状があるなら「生来型」ですが、上記の奥さんの例でいえば、以前はオルガズムを得られたわけですので「獲得型」になります。

判断するのが難しいのは、特定の相手(状況など)にだけ起こるのか・そうでないのか、という点です。すでに結婚している女性に、ほかの人とセックスしてみてくださいとは言えませんからね。

しかし、特定の相手にだけ起こる「状況型」なのか、誰とでも起こる「全般型」なのかを特定するのは重要ポイントです。そこに心理的な何らかの作用が働いている可能性があり、解決につながる糸口を見つけられるかもしれませんからね。

「女性オルガズム障害」の有病率にはばらつきがある

どのくらいの女性がオルガズムについての問題を抱えているかというと、『DSM-5』では有病率を「10-42%」としています。これは、年齢、文化的な背景、症状の持続期間、重症度などの要因によって大きく変化するからです。

さらに、そこにはオルガズムについての女性特有のメカニズムが関係しています。『DSM-5』では、

女性のオルガズムの初体験は、思春期前の時期から成人期に達した後までどの時期にも起こりうる。

オルガズム初体験の年齢は男性よりも女性のほうがばらつきが大きい。また女性のオルガズム経験の報告は年齢とともに増加する。

多くの女性はさまざまな性的刺激を経験し、自身の体についての知識を深めるにつれて、オルガズムを経験することを学習する。

女性の一貫してオルガズムがある(”通常またはいつも”オルガズムを得ることと定義される)割合は、相手との性交中より自慰行為中において高い。

となっています(同書p423より引用)。射精することとオルガズムが結び付いている男性と異なり、女性の場合は「オルガズムは経験から学習するもの」なのです。

また、自慰行為ではオルガズムを得られるのに、パートナーとのセックスではオルガズムを得られない、というのも女性の場合には珍しいことではないのです。

女性オルガズム障害は治療の難しい精神疾患です。また、そもそも治療を要するものなのか?という議論もあります。オルガズムに到達できない人の割合は、北欧で「17.7%」ですが、東南アジアでは「42.2%」にもなるといわれます。

つまり文化的な要因が非常に影響するものなのです。日本人はセックスについては淡泊といわれますのであまり気にしなくてもいいのかもしれません。もちろん本人が症状を苦痛に感じていれば、解決すべきなのですが……。

(松田ステンレス@dcp)

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