「適応障害」とは? つらい時は「ストレス要因から離れる」のが重要

人間には周囲にどうもなじめない、といったことが起こります。

例えば転職して職場が変わった、引っ越して住環境が変わったなどのときに「どうもなじめないなぁ」などと感じることがあるでしょう。それでも徐々に慣れてそれも日常の一部になっていくものです。

これは誰にもでも起こることなのですが、落ち込みがひどくなるなど社会生活に支障を来すようになると問題です。

今回は「適応障害」という精神疾患(mental disorder)についてご紹介します。

「適応障害」は環境に順応できなくて起こる

適応障害」(adjustment disorder)は、周囲の環境や出来事によるストレスによって情緒面や行動面に症状が起こり、社会生活を営むのに支障を来してしまっている状態を指します。

WHO(世界保健機構)の診断基準を示す『ICD-10』では、

主観的苦悩と情緒障害の状態であり、通常社会的な機能と行為を妨げ、重大な社会的な変化に対して、あるいはストレス性の生活上の出来事(重篤な身体疾患の存在あるいはその可能性を含む)の結果に対して順応が生じる時期に発生する。

と説明しています※1

読むのも面倒なほど難しい文ですが、要は、

・本人が悩み、情緒障害を起こして、社会的生活を営むのが難しくなるほどである。

その原因は重大な社会的な変化や、本人に強いストレスを与える出来事で、それに本人が順応しようとしたときに起こる

・重い病気にかかったこと、重い病気になる可能性も原因に含む。

ということです。重要なのは「本人が順応しようとしたときに」という点です。強いストレスを与える環境に本人が適応しようとして、心に無理が掛かり、それで不調が現れるのです。

この適応障害の主な症状は、

・抑うつ的な気分/抑うつ状態
・不安

です。これが増進して「周囲への関心が薄れる」といった心の変調を来すこともあります。また、

・頭痛
・目まい
・だるさ、倦怠(けんたい)感
・不眠

といった症状が現れることもあります。行動の障害症状としては、

・けんか、口論が多くなる
(攻撃的な行動)
・飲酒量が増える/喫煙量が増える
・引きこもり、無断欠勤

などが挙げられます。

適応障害は誰にでも起こり得る

この適応障害は誰にでも起こり得ます。というのは、入学、引っ越し、転校、卒業、入社、恋愛、結婚、離婚、退職など人生に起こるさまざまなイベントで、

誰もがストレスの強い環境へ適応しようと努力する

からです。その順応の努力が報われなければ、無力感にさいなまれたり、自分を責めたりするでしょう。無力感や自分を責める気持ちが本人を抑うつ的な気分にします。

このような過程で適応障害を引き起こしてしまうと考えられるのです。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』には、適応障害は「大変ありふれたもの」で、「病院での精神科コンサルテーションでは適応障害が最も多い診断名で、しばしば50%に達する」と書かれています※2

新しい職場に慣れない、結婚したけど失敗だっかもしれない、といった気持ちは誰もが抱くものでしょう。

そこから、情緒障害や行動障害が見られる適応障害を発症するかどうかは、本当に少しの差なのです。

女性はライフイベントが多いので……

女性は、初潮・出産・育児・閉経などがある分、男性に比べてライフイベントが多いですね。つまり、(自分の体も含めて)環境が変化することが多く、それだけ受けるストレスも増えます。

適応障害は独身女性に多いとされますので、何か大きく環境が変化した際には、うまくストレスをやり過ごすようにしてください。

適応障害についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 新しい環境のために心が疲れてしまったら、順応しようと頑張るのをやめて、環境を変えることを考えてみましょう。

合わない職場なら転職するとか、少し休んでみるとか、ストレス要因から離れることが重要になります。自分でどうしようもないと思ったら、精神科を受診してみるのも一つの方法です。

※1
⇒データ引用元:『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 新訂版』(株式会社医学書院)2017年3月1日新訂版第11刷発行,p160

※2
⇒データ引用元:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(株式会社医学書院)2016年2月1日第1版第5刷発行,p285

(高橋モータース@dcp)

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