「抜毛症」とは? 自分で毛を抜くのがやめられない精神疾患

毛が自然に多く抜けてしまうのは「脱毛症」ですが、自分で多くの毛を抜いてしまうのは「抜毛症」です。不安・退屈などの気持ちが引き金になって毛を抜き、それで安心したり、落ち着きを得たりといったことが見られます。この「抜毛症」についてご紹介します。

毛を抜くのをやめようと思ってもやめられない

「抜毛症」は正常な体毛を抜いてしまう精神疾患mental disorder)です。どの部位の毛を抜くかにはいろいろあるのですが、頭髪を抜くことが多いので、あまりに頻繁に抜毛を行うと頭にはげが目立つようになります。

頭髪以外で多いのは眉毛・まつ毛で、脇毛・顔表面の毛・陰毛・肛門周辺の毛を抜くことは少ないとされます。

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によれば抜毛症の診断基準は以下のようになります。

●抜毛症の診断基準
A.繰り返し体毛を抜き、その結果体毛を喪失する。
B.体毛を抜くことを減らす、またはやめようと繰り返し試みる。
C.体毛を抜くことで、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
D.体毛を抜くこと、または脱毛は、他の医学的疾患(例:皮膚科学的状態)に起因するものではない。
E.体毛を抜くことは、他の精神疾患の症状(例;醜形恐怖症における本人に認識された外見上の欠陥や傷を改善する試み)によってうまく説明されない。

⇒引用元:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』株式会社医学書院,2016年2月1日第1版第5刷発行,p249

重要なのは、

・本人がやめようと思っているのにやめられない
・物理的な疾患、たとえば皮膚病などによるものではない
・ほかの精神的な疾患によるものではない

という点です。

上記で挙がっている「醜形恐怖症」は「自分で自分を醜いと思い込む」という精神疾患で、そのために体毛を抜くのであれば「醜形恐怖」にフォーカスして診断、治療を行ったほうがいいわけです。

「E」は、体毛を抜く行為がほかの精神疾患の症状として現れたのでなければ、「抜毛症」と診断されるという意味です。

「抜毛症」の原因は不明 治療には長い時間が必要

抜毛症の原因はよく分かりません。患者の一部には遺伝性のものが認められるという指摘がありますが、明確にはなっていません。

抜毛症は、子供のころは男女で有病率(病気を経験する割合)は同じ程度なのですが、青年期・成人では「1:10」で女性のほうが圧倒的に多いとされています(上記『DSM-5』p.250)。

抜毛症の治療には長い時間がかかるとされます。これは、もともと毛を抜くくせがあり、これが高じたケースが多いためでもあります。皆さんもご存じのように、人のくせというのはなかなか矯正できないものなのです。

また、何かストレスを受けたときに「毛を抜くこと」でそれを和らげるといった仕組みが働いていると、無意識のうちに毛を抜いていることがあります。この場合には何かほかにストレスを緩和する方法を体が覚えなければ、抜毛行為を止めることができません。そのためやはり時間がかかるのです。

抜毛症は成人・青年期では女性に多い精神的疾患です。髪の毛をいじっているうちに抜くことがくせになってしまった、という人は少しばかり注意してくださいね。

(松田ステンレス@dcp)

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