「水道水がカルキ臭い」とは?

日本の水道設備は世界各国の中でも優れており、市販されている飲料水よりも厳しい基準で管理されています。しかし、それでも「水道水はカルキ臭い」などといわれますね。では、なぜ水道水はカルキ臭いのでしょうか。今回は「水道水」についてご紹介します。

そもそも「カルキ臭い」ってどういうこと?

水道水が臭いたとえとして、一般に「カルキ臭い」といいますね。この「カルキ」は本来「次亜塩素酸カルシウムさらし粉)」のことで、ドイツ語の「クロールカルキ」を略して「カルキ」といいます。

クロールカルキは水酸化カルシウムと塩素から製造する化学物質で、漂白や消毒に使われます。かつては学校のプールの消毒剤としてよく使われていたもので、プールの水といえば「塩素臭い」というイメージがありました。つまり、「カルキ臭い」とは「塩素臭い」とほぼ同義だといえるでしょう。

ただ、実際には水道水のカルキ臭さは塩素だけによるものではありません。『千葉県水道局』が運営する「おいしい水づくり計画オフィシャルサイト」によると、もとの水(原水)に含まれているアンモニアと、消毒のために入れた塩素が化学反応を起こして生成される「トリクロラミン」という物質がカルキ臭さの要因の一つだとされています。

なぜ水道水が「カルキ臭い」のか

日本の水道水は、『水道法』によって厳しく管理されています。カルキ臭の原因となる塩素剤については、病原菌による汚染を起こさないために、給水栓(水道の蛇口)で、0.1mg/リットル以上の遊離残留塩素が検出されるように義務付けられています。つまり、蛇口にまで消毒用の塩素が残っているため、水がカルキ臭くなるのです。

とはいえ塩素濃度を必要以上に高くすると、味が悪くなってしまい、臭いもします。そこで、蛇口での残留塩素濃度の上限を1mg/リットル以下に抑えるという目標値が設定されています。

また、全国各地の水道局ではできるだけおいしく飲める水を提供するため「おいしい水プロジェクト」などを立ち上げており、「おいしい水の要件」として残留塩素濃度は0.4mg/リットル以下を目標に設定しています。つまり、日本の水道水における残留塩素濃度は、0.1-0.4mg/リットルになっています。

ちなみに「WHO(世界保健機関)」が設定している国際基準では、残留塩素のガイドラインは5mg/リットルです。この水準から見ると、日本の水道水の残留塩素濃度はかなり低くなっていることが分かります。

水道水とミネラルウォーターはどちらが安全?

近年、いわゆる「ミネラルウォーター」が販売されるようになり、水道水ではなく市販のミネラルウォーターを飲む人が増えています。「ミネラルウォーターは水道水よりもおいしく安全だ」と考える人が多く、さまざまな種類の水が販売されています。

日本産のミネラルウォーターの場合、沈殿・ろ過・加熱殺菌などの処理を行い、安全性を高めています。そのほかにも、ミネラル成分を人工的に調整するような加工が行われることもあります。ミネラルウォーターは『食品衛生法』で設定されている18項目の基準をクリアしなければなりません。

また、ヨーロッパから輸入されるミネラルウォーターでは、そもそもの基準が違っています。ヨーロッパのミネラルウォーターは殺菌処理などの加工が禁止されているのです。ただし、これには理由があります。ヨーロッパでは水源を汚染から保護することが義務付けられているため、殺菌処理の必要がないと考えられています。

しかし、水道水は『水道法』による「水質基準項目」が51項目設定されています。これは最低限クリアしなければならない基準で、それ以外にも「水質管理目標設定項目(水質管理において留意する必要がある項目)」26項目、「要検討項目(今後、必要な情報・知見を収集し、検討すべき項目)」47項目が設定されているのです。

ミネラルウォーターの基準が甘いということではありませんが、水道水にはとても厳しい基準が設けられているということが分かります。

カルキ臭を取り除く方法

水道水に消毒用の塩素が含まれているのは紛れもない事実で、どうしても臭いが気になるという人もいらっしゃるでしょう。そこで、水道水のカルキ臭を取り除くための、以下のような方法をご紹介します。

●ペットボトルなどにくみ、冷蔵庫に入れておく
水道からペットボトルやボウルに水をくみ、冷蔵庫で一晩保存すると、臭いが弱くなります。これは水から塩素が抜けてしまうためです。ただし、長期保存はできませんので、なるべく早めに使い切りましょう。

●沸騰させる
水道水を沸騰させると塩素が抜けて臭いがなくなります。ただし、この場合は「トリハロメタン」という発がん性のある物質が生成されてしまいます。トリハロメタンを抜くには、水が沸騰し始めてから、さらに長時間沸騰させ続けなければなりません。

●レモンの汁をたらす
飲食店などでレモンの香りの付いた水を提供していることがありますね。レモンに含まれるビタミンCには塩素を分解する働きがあり、カルキ臭さを消します。同時にレモンの爽やかなフレーバーが加わるのも魅力です。

●浄水器を使う
浄水器を取り付けるとカルキ臭以外にもさまざまな成分を取り除き、水道水をおいしい水に変える効果が期待できます。大型のものでなくとも、蛇口に小型のフィルターを取り付けるだけでもある程度の効果はあるでしょう。

⇒参照・引用元:『東京都水道局』「よくある質問」
https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/faq/

⇒参照・引用元:『東京都水道局』「水源・水質」
https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/kijun/

⇒参照・引用元:『千葉県水道局』「おいしい水づくり計画オフィシャルサイト」「水のQ&A」「その19塩素注入量の低減とカルキ臭について」
https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/qa/qa19.html

日本の水道水はとても厳しい基準をクリアしており、安全な飲み水だといえます。しかし、どうしても臭いが気になるという場合、ご紹介したような方法でカルキ臭を軽減させることもできます。高額な浄水器を使わない方法もありますので、お試しあれ。

(松田ステンレス@dcp)

コメント