「サブリミナル効果」伝説の真相。元の実験自体がそもそもなかった

現在でも「サブリミナル」という言葉がときどきメディアに登場します。

一般にいわれる「サブリミナル」とは、ほんの一瞬、見たと認識できないぐらいの画像を動画に挟むだけでもその効果があるというものです。

この「サブリミナル効果」は本当に存在するのでしょうか?

サブリミナル効果の伝説は「ありもしない実験」から始まった!

もはや都市伝説化しているといってもいい「サブリミナル効果」。

次のような実験が前フリとして引かれることが多いのですが、読者の皆さんも1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

アメリカ合衆国のある映画館で実験が行われた。

映画のフィルムに「あなたはポップコーンを食べたくなる」と書かれた一コマを挟み込んだ。

その映画を上映したところ、ポップコーンの売上が急増したのだ。

「ポップコーン」が「コカ・コーラ」だったり、「売上の急増」が「売上が倍増」など、いろいろに変化しますが、これは全部ウソです。

元ネタはあります。合衆国で以下のような報道があったのです。

1956年、アメリカのニュージャージー州フォートリーの映画館で、広告業者のジェイムズ・ヴィカリーは、「ポップコーンを食べろ」「コカ・コーラを飲め」というメッセージを、上映中の映画『ピクニック』に差し込んで1/3000秒表示するという実験を行った。

この表示は5秒ごとに行われ、実験期間は6週間に及んだ。

結果は驚くべきもので、それ以前の時期と比べて売店では、

・ポップコーンの売り上げ:57.5%アップ
・コカ・コーラの売り上げ:18.1%アップ

となった。

「意識に上らないような刺激でも、人間は無意識のうちに認識していて、このようなメッセージに対して反応してしまう」のだ。

※ヴィカリーの実験は1957年の『BUSINESSWEEK』『THE NEW YORKER』で報道されました。

ところが、この報道に登場した「実験自体がなかった」ことが確実視されています。論文も報告書も何もありません。

実際、心理学者が同様の実験を行っても「効果はあるのやかないのか分からない程度」とされています。つまり「サブリミナル効果」なるものは全くの「神話」であり、言い方を換えれば「デマ」です。

そもそも「サブリミナル」とは何か?

誤解しないでいただきたいのは、心理学ではサブリミナル効果についてきちんと研究が行われてるという点です。

サブリミナルとは「閾下(いきか)」と訳されます。「閾」とは「しきい」を意味しています。つまり、意識に上らない「しきいよりも低い」ということです。

閾下刺激(意識に上らないような刺激)を与えて、それが人間にどのような影響を与えるのかについて実験しているのです。

上掲のような「見えるか見えないくらいの刺激=映画の一コマを換えておく」というのも閾下刺激の手法の一つです。

心理学では、このよう実験手法を「サブリミナル刺激投射法(閾下刺激投射法)」、それによって得られる効果のことを「サブリミナル効果」と呼びます。

しかし、残念ながら上記のとおり「サブリミナル効果」はほとんど認められない、というのが科学的な結論です。

現在でも「サブリミナル効果」があると、「神話」を信じている人がいらっしゃるかもしれません。しかし、神話の元になった実験自体がなかったというのが本当のところなのです。

(高橋モータース@dcp)

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