合衆国で「地球が平らだと信じる人」が増加中。 なぜ?

現代人なら、地球が球状であることを知っています。科学的にそうであることは証明されていますし、学校でもそう習いますね。

「中世でもあるまいに地球が平らだと信じることなどあり得ない」、そう思われるでしょう。しかし、実は「地球を平らだと信じる人」が増えている、というのです。

例えば『NewsWeek』誌でも「『地球平面説』が笑いごとではない理由」という記事で、以下のように書かれています。

科学関連の信じられないようなニュースが、連日メディアをにぎわせている。例えば、「全米22州で700人以上がはしかに感染」というニュース。

(中略)

極め付きは、「地球は平面だ」と主張する「フラットアース論者」が増えていることだろう。
(後略)

⇒参照・引用元:『NewsWeek(日本語版)』「「地球平面説」が笑いごとではない理由」(以下同)

赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)

同記事では、筆者(リー・マッキンタイヤ:ボストン大学哲学・科学史センター研究員)は「地球は平らだ」と信じる人の特徴について以下のように指摘しています。

まず、はっきりさせておくべきなのは、フラットアース論者は大真面目だということだ。

当然だろう。21世紀の今、「地球は平面だ」などと言えば嘲笑される可能性があることは、本人たちも覚悟の上だ。また、ほとんどのフラットアース論者は、以前は地球は丸いと思っていた

だがある日、「真実に目が覚め」て、自分をだまそうとする世界的な陰謀に気が付いたと言う。

その口ぶりは、まるで宗教的な経験を語っているかのようだ。

この「宗教的な経験のようだ」という点が問題なのでしょう。自分が目覚めた「真実」について、周りの人に語り、説得し、「改宗させてしまう」のです。

同記事では以下のように書いています。

いまフラットアース運動は急速に拡大している

近年はアメリカの多くの都市でこの考え方を信奉する人たちの会合が開かれているし、プロバスケットボール選手のカイリー・アービングのように、地球が平面だと信じていると公言する有名人も現れている(アービングはのちに撤回)。

日本人からするとにわかに信じられないような話ですが、2020年02月24日には「地球平面説」を証明しようとマイク・ヒューズという人が、お手製のロケット(蒸気推進)に乗り込んで墜落。死亡するという事件が起こっています。

⇒参照・引用元:『TRT(日本語版)』「地球平面説を証明しようとした米国人、命を落とす」


↑マイク・ヒューズさんの訃報を伝える『地球平面協会』(後述)の記事

なぜ合衆国で「地球平面説を信じる人が増加する」なんて状況になっているのでしょうか?

「オレはこう信じている」というインデペンデントな点が重要

しばしば日本最強のデバンカーと呼ばれる皆神龍太郎先生にお話を伺いました。

――どうも、合衆国で「地球平面説」を信じる人、もうこれは「ビリーバー」(信者)と呼ぶべきかもしれませんが、増えているようです。なぜでしょうか?

皆神先生 「地球平面説」は昔からあります(笑)。

ただ、紀元前240年ごろには、ギリシアの学者エラトステネスが、夏至の時の太陽の傾きを利用して地球の直径をすでに求めていますから、「地球が球体」という科学的な知識は2,200年以上の歴史ある常識だといえます。

――しかし、この2020年になっても「地球が平らだ」と信じる人がいるというのは……。

皆神先生 もちろんエラトステネスの後も、地球がどんな形状をしているのかについては議論がされてきました。常識や定説に異論を唱える人は後を絶たないものです。

例えばアメリカには『地球平面協会』(Flat Earth Society)がありますが、1956年に設立されて現在まで続いています。


↑『地球平板協会』の公式サイト

――まだあるんですか!

皆神先生 まだあるんですよ(笑)。

このような協会ができ、まだあることには、アメリカの文化的背景が影響していると思えます。

つまり、「誰が何と言おうと自分がそう思えばそうなのだ」「自分がうまく理解できない以上は定説の方が違うのだ」と考える人が多いから成立するのはないでしょうか。

つまり、良くいえばインデペンデントで個が強いわけです。悪く言えば、我が強く人の言うことを聞かない(笑)

また、そのような人を同調圧力でやり込めたりしない。何を信じようと個人の自由と尊重する精神があるともいえます。悪くいえば放っておくわけですが(笑)。

――なるほど。言われてみると確かにアメリカっぽいかもしれませんね。

「トランプ大統領の影響」も見逃せない?

――他にも要因はあるでしょうか?

皆神先生 なぜ、地球平面説を信じる人が今アメリカで増えているかと言うと――まあこれは本当に今増えているとしてですが、トランプさんの影響が強いのではないかと思っています。

――大統領の影響ですか?

皆神先生
 地球平面説などという、普通に考えればとんでもない話を平気で信じられるというのは、お話ししたように、「誰が何と言おうと自分がそう思えばそうなのだ」と自分のオリジナルの考えに固執し、人の言うことなどは聞かないというインデペンデントの強い意識がないと成り立たないわけです。

まさにトランプさんの場合はそれだと思うのです。

例えば今回のコロナ騒動についても、彼は SNSなどで「子供にはすでに免疫がある」とか、効果がまだ明らかではないマラリア薬を「予防薬として自分は飲んでいる」とか、「これが特効薬だ」とか、ついには「FDA(米食品医薬品局)に闇の組織が圧力をかけて特効薬を許可させないようにしている」といった陰謀説まで、何の根拠も示さないままツイッターに流しています。

陰謀論の頂点に位置する米大統領自身が陰謀論を唱えてしまって、一体どうなさるおつもりなんでしょう?

――マラリアの薬の件は知りませんでした。

皆神先生
 ちなみにマラリアの特効薬の方は効果がないとして、すでに治験が打ち切られているのですが、トランプさんはそんなことには全く躊躇せず、まだ飲み続けているようです。

つまり、彼らの国の親分がほとんど思いつきレベルの勝手なことを公言しているので、国民の皆さんもまた自分もその程度の思いつきのこと強く断言してもいいのだと思っているのではないでしょうか。

――なるほど。罪作りな大統領ですね。

皆神先生 トランプ大統領は、証拠もなく思いつきレベルの発言を SNS で度々繰り返しているので、 TwitterやFacebookから事実関係を確認しろと言われました。それで発言が止められてしまうという大統領はかなり珍しいと思います。

日本の総理大臣の場合は、野党から足を引っ張られないということが一番大事なので、常に注意深い発言ばかりをしてあまり面白くはありません。

その点、トランプは平気ででたらめなことを言うので、そのレベルに合致するような国民からもまた人気があるんだと思います。

――そういう見方もできるわけですね。

皆神先生 日本で地球平板説が全くはやらないのは、科学教育が行き渡っているからという見方が強いと思いますが、その一方で、周囲からの同調圧力が極めて強く、かつその圧力に対して個々人が簡単に屈してしまうという国民性もあるんじゃないでしょうか。

地球が平らだと信じればいいというわけではありませんが、そんな破天荒な見方や主張をも許すような自由な気風の中から、ほんのごく一部でしょうが、誰も思いつかないようなトンデモナイ発見や発明が生まれてくる気がしています。

――ありがとうございました。

「地球平板説」を信じる人がアメリカで増えているのは、アメリカ人の気質や文化的背景による、と考えられるとのこと。また、トランプ大統領の影響もあるかもしれません。平らだったら確かに面白いのですが……。

(高橋モータース@dcp)

皆神龍太郎

疑似科学ウォッチャー。『と学会』運営委員。ASIOS会員。しばしば日本最強のデバンカーといわれる存在。『UFO学入門 伝説と真相』(楽工社)、『あなたの知らない都市伝説の真実:だまされるな! あのウワサの真相はこれだ! 』(学研パブリッシング)など著書多数。

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