二日酔いやアルコール依存症など、お酒を飲むことによるデメリットはたくさんあります。その一方で「少量の飲酒は健康のために良い」という説もありますね。これは本当でしょうか?
適量のお酒を飲むのは体にいい?
1981年にイギリスのマーモット博士が「飲酒と死亡率のJカーブ効果」という疫学調査を発表しました。この調査では「お酒を全く飲まない人」の全死亡率(病気・事故・事件などあらゆる原因による死亡率)を1とした場合、「毎日適量のお酒を飲む人」は死亡率が低下するという結果が出ています(ただし、お酒の量が多くなると死亡率は高くなります)。これをグラフ化すると「J」の文字になるため「Jカーブ」と呼ぶのです。
同様の研究は世界各国でも行われており、循環器系疾患による死亡率に限定した場合でもJカーブになると報告されています。ただし、このれに当てはまるのは中年男女といわれている点に注意してください。
少量のアルコール摂取でリスクが下がる病気がある
アルコールを摂取すると体にさまざまな作用が起こります。これは有害なものばかりではなく、以下の良い作用も起こります。
・血液中の「HDLコレステロール」を増加させる
HDLコレステロールは一般に「善玉コレステロール」と呼ばれるもので、血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割をしています。HDLコレステロールが少なくなると動脈硬化、高血圧、心筋梗塞などにつながります。
・血小板の凝集を抑制する
血管が傷ついて出血が起こると、傷口に血小板が集まって血栓を形成し、傷をふさぎます。血小板が傷に集まる働きを「凝集」といいますが、アルコールによってこの働きが抑制されます。凝集が抑えられるということは、血液の流れが良くなることでもあります。
・インスリンの分泌を促す
お酒を飲むと、インスリンの分泌が促されます。健康な人であれば、これによって血糖値を下げる効果があります。血糖値を下げることは、糖尿病の予防にもつながるといえます。
上記の作用によって、適量の飲酒をしている人は
・狭心症
・心筋梗塞
・脳梗塞
・糖尿病
などの疾患の発症率が低下すると考えられます。ただし、上記以外の疾患については飲酒によって発症リスクが上がるので、飲み過ぎには気を付けましょう。
●お酒の適量は?
『アルコール健康医学協会』では、アルコール摂取量の基準となる1単位を純アルコール換算で20gとしています。これを主なお酒に換算すると、
・日本酒(アルコール度数15度):180ml
・焼酎(アルコール度数25度):約110ml
・ワイン(アルコール度数14度):約180ml
・ウイスキー(アルコール度数43度):60ml
となります。上記のJカーブで「最も発症リスクが少ない」カーブの底に当たる部分のアルコール摂取量が約20gとされており、「死亡リスクが低い適正な飲酒量は、純アルコールにして20g」だと考えられるのです。
●そのほかのメリットは?
適量のお酒を飲むことは、心筋梗塞などの特定の疾患を予防する効果が期待できそうです。それ以外にも、以下のようなメリットが考えられます。
・「ドーパミン」の分泌が促される
「ドーパミン」は「快楽物質」と呼ばれることもあるように、楽しいと感じるようなことがあると分泌されます。お酒を飲むと陽気になるのはドーパミンが分泌されるからです。
お酒を飲んでストレス解消というのは普通のことですが、適量を飲むことによって糖尿病や循環器系の疾患を抑える効果が期待できるというのは意外ですね。ただし、適量を超えると疾患の発症リスクは上がります。お酒の飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。
⇒データ引用元:『アルコール健康医学協会』「飲酒の基礎知識」
http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html
※この記事は定期的なアルコールの摂取を推奨するものではありません。また、「アルコール不耐性(下戸)」の人に飲酒を勧めるものでもありません。
(松田ステンレス@dcp)
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