「台風の名前」はどのように決まる? 実は10個ずつ14カ国が出した

かつては台風は「○号」と通し番号だけで呼ばれていましたが、最近では「ハイシェン」などの名前でも呼ばれるようになりました。この台風の名前がどのように決められているかご存じでしょうか?

日本はシンプルに番号で呼んでいました

もともと日本の『気象庁』では、毎年1月1日以後、最初に発生した台風を「1号」として、そこから発生順に「2号」「3号」……と名前を付けてきました。よく知られているように、アメリカでは人名を付けていますが、あくまでもそれはアメリカでの呼び名でした。

しかし、2000年(平成12年)に、北西太平洋・南シナ海の領域で発生する台風には、その域内で共通の名前を付けようということになったのです。

台風の名前は持ち回りで付く

そこで、領域内の下の14カ国10個ずつ名前を出して、140個の名前のリストを作り、それを順番に使うことにしたのです。

台風の名前を出した国
・アメリカ
・カンボジア
・タイ
・フィリピン
・ベトナム
・マカオ
・マレーシア
・ミクロネシア
・ラオス
・韓国
・香港
・中国
・日本
・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)

名前のリストは、1番のカンボジアの「Damrey」(ダムレイ = )から始まって、140番のベトナムの「Saola」(サオラ = ベトナムレイヨウ)まで。140番まで使ったら、最初の「Damrey」に戻るというふうに、リストを何周もして名前を使います。

では、日本はどんな10個の名前を出したのでしょうか?

日本の出した名前は、下のように全て「星座の名前」で、台風の名前になるときは「座」を外します。

日本が名付けた台風の名前10個

Tembin(テンビン):てんびん座
Yagi(ヤギ):やぎ座
Usagi(ウサギ):うさぎ座
Kajiki(カジキ):かじき座
Kammuri(カンムリ):かんむり座
Kujira(クジラ):くじら座
Koppu(コップ):コップ座
Kompasu(コンパス):コンパス座
Tokage(トカゲ):とかげ座
Hato(ハト):はと座

なぜ、この星座が選ばれたのか?

星座の名前はいいとして、なぜこれらの星座が選ばれたのでしょう?

オリオン座」「はくちょう座」「さそり座」といったメジャーな星座は他にもありますし、選ばれているのはどれもどちらかというと、マイナーなものばかりだと思われないでしょうか?

そこで、「なぜこの星座なのか?」を『気象庁 天気相談所』に聞いてみました。

すると、星座の名前にしたのは「誰にも利害関係が薄く、しかも一般に広く知られているもの、ということで星座が選ばれた」そうです。

どの星座を選ぶかについては、以下のような選択基準があったとのこと。

①星座の名前の中でも、その名前が流通する中で利害を与えないもの、気象情報に誤解を与えないもの

②音節が多くなくて、発音しやすいもの

③表記したときに、文字数が多くなく、アルファベット9文字以内のもの

④他国で使われたときに、感情を害するような意味の言葉にならないこと

①から④までの条件を満たすものとなると、確かに星座の中でも限られてきそうです。

名前にはお国柄が出る!?

日本は全て星座の名前ですが、他の国はけっこうバラバラな名前を出しています。

アメリカとミクロネシアを見てみましょう。

アメリカが名付けた台風の名前10個

Maria(マリア) 女性の名前
Utor(ウトア) スコールライン
Francisco(フランシスコ) 男性の名前
Matmo(マットゥモ) 大雨
Higos(ヒーゴス) いちじく
Etau(アータウ) 嵐雲
Omais(オーマイス) 徘徊
Aere(アイレー) 嵐
Roke(ロウキー) 男性の名前
Vicente(ヴェセンティ) 男性の名前

アメリカの慣習からか、人名が4つありますが、「いちじく」がなぜ入っているのかは謎ですね。

ミクロネシアが名付けた台風の名前

Ewiniar(イーウィニャ) 嵐の神
Soulik(ソーリック) 伝統的な部族長の称号
Fitow(フィートウ) 花の名前
Mitag(ミートク) 女性の名前
Sinlaku(シンラコウ) 伝説上の女神
Soudelor(ソウデロア) 伝説上の首長名
Nepartak(ニパルタック) 有名な戦士の名前
Rai(ライ) ヤップ島の石の貨幣
Nanmadol(ナンマドル) 有名な遺跡の名前
Guchol(グチョル) うこん

嵐の神、女神の名前など、神秘的な名前が選ばれているのかと思いきや、急に「うこん」が入っているのは日本人には驚きでしょう。

命名には、やはりお国柄が出ていて面白いですね。

全ての名前を知りたい人は、以下の気象庁のページを参照してください。

『日本国 国土交通省』 気象庁の「台風の番号と名前」に関するページ

このような命名則に従って台風は命名されているのです。しかし、日本人にとっては昔ながらの「○号」で呼ぶ方が耳慣れしている分いいのかもしれません。

(高橋モータース@dcp)

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