体の不調よりも、心の不調のほうがこたえるにではないでしょうか。「うつ」(うつ病)にかかり回復できずにいるという人がいらっしゃるかもしれません。環境の変化は人に大きな影響を与えます。環境ががらっと変わる人生の節目で、人はうつになりやすいのをご存じでしょうか。
「うつ」とはどんな疾患でしょうか?
「うつ病」にかかる人が増加しているといわれます。ただし、失恋、失敗などが原因で一時的に落ち込んだり、抑うつ的な気分になることは誰にでもあります。これを「うつ病」とはいいません。
「うつ病」は、一時的な落ち込みではなく、抑うつ気分が継続することがポイントです。また現在では、気分障害の一つとされる「うつ病」には、「抑うつ障害」という名称を用いることが一般的です。
『IDC-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 新訂版』によると、軽症・中等症・重症を問わず、
患者は通常、
・興味と喜びの喪失
・活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少
に悩まされる。わずかに頑張った後でも、ひどく疲労を感じることがふつうである
となっています。また、他の一般的な症状として以下のようなものが挙げられています。
(b)自己評価と自信の低下
(c)罪責感と無価値感
(d)将来に対する希望のない悲観的な見方
(e)自傷あるいは自殺の観念や行為
(f)睡眠障害
(g)食欲不振
⇒データ引用元:『IDC-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 新訂版』P.129
抑うつ障害の診断は安易にすべきではない、と指摘する専門医もいらっしゃいますが、上記のような特徴があり、それが2週間以上続くと、多くの場合「抑うつ障害」と診断されます。
抑うつ障害は個人によって症状の差が大きいのですが、あり得ないことを考えてしまう妄想、また幻聴が現れることもあります。
ライフステージごとに発症しやすい「うつ」がある
人生の節目は気分に変調を来しやすく、それをきっかけに抑うつ的になってしまい、「うつ」を発症することがあります。女性を例にとると、ライフステージごとに発症する以下のような「うつ」です。
●マタニティーうつ・産後うつ
出産前の妊娠中、また出産後は、生活がこれまでのものとは一変し、将来への不安、子育ての不安を感じて抑うつ的な気分になりがちです。この抑うつ状態が継続するとメンタル的な危機です。
●更年期うつ
閉経を挟んだ前後約10年を「更年期」といいますが、女性はこの時期ホルモンの分泌・バランスが大きく変化するため、気分が落ち込んだり抑うつ的な気分になりがちです。これが継続してしまうと本格的な抑うつ障害に移行する可能性があります。
●老年期うつ/初老期うつ
ちょうど定年退職の年代に当たる60歳前後は、老年期の始まりです。仕事をリタイヤするので社会的な面、家庭的な面で人間関係に変化が生じ、落ち込んだり、抑うつ的な気分になりがちです。この心理状態が続くと抑うつ障害になってしまう可能性があります。
「マタニティーうつ」「産後うつ」「更年期うつ」「老年期うつ」などは正式な病名、また精神疾患(mental disorder)の名称ではありません。しかし、ライフステージをよく反映した言葉なので一般によく使われます。
うつ(抑うつ障害)は誰でもなる可能性があります。また、気分の落ち込みやすい時期が人生にはあるものです。特に女性は、出産前後、また更年期に注意しなければなりません。抑うつ障害をうまく避け、明るく晴れやかな気持ちで日々を送れるようにしてください。
(松田ステンレス@dcp)
コメント