「あの匂い」の正体とは? 「雨上がりの匂い」「お日さまの匂い」

匂い」が記憶に結び付きやすいという件については別記事でご紹介しましたが、「○○の匂い」と聞いてすぐに思い浮かべることができるものがありますね。

例えば「雨が降る前に感じる匂い」や「お日さまの匂い」などです。このような匂いの正体についてご紹介します。

雨上がりの匂い

雨が降った後、土のような何ともいえない匂いがします。これは有機化合物の一種「ゲオスミン」の匂いなのです。「ゲオスミン」とは「大地の匂い」という意味のギリシャ語で、土壌中の微生物によって生産されています。

また、雨の降り始めに感じる匂いは「ペトリコール」といいます。これは1964年にオーストラリア連邦科学産業研究機構の研究者によって名付けられました。このときには「長い間日照りが続いた後の最初の雨に伴う独特の香り」と定義されています。

雨粒が地面や植物にぶつかると細かな粒子となって少量が大気中に拡散して舞い上がります。この水の粒子には植物の油状物質などさまざまな物質が含まれていて、これが大気中に拡散することで匂いを生じているのです。

この「ペトリコール」が発生するメカニズムは、マサチューセッツ工科大学の研究者が高速カメラを用いて発見し、2015年に発表されました。

雨が降っている場所で発生した「ペトリコール」の匂いは風に運ばれ、そのためまだ雨が降っていないところでも雨の匂いがします。

赤ちゃんの匂い

赤ちゃんの匂いというと、甘いミルクのような匂いを思い浮かべるでしょう。この匂いの正確な成分などは残念ながら明らかになっていないようです。しかし、赤ちゃんの匂いが女性の脳に影響を与えるという研究があります。その研究の概要は以下のようなものです。

・被験者は6週間以内に出産した女性15人と出産の経験がない15人の女性
・生後2カ月の新生児のパジャマから匂いを抽出
・6週間以内に出産した女性は、脳内のドーパミンシステムが活性化した

ドーパミン」というのは脳内ホルモンの一つで、分泌されると気分が良くなったり、やる気が出たりします。この研究では、6週間以内に出産した女性は、出産したことがない女性に比べて、赤ちゃんの匂いを嗅いだときにドーパミンが出ていることが分かりました。つまり、赤ちゃんの匂いは母親に喜びを与えるのです。

残念ながら、赤ちゃんの匂いの成分や匂いが出る原因などは現在でも分かっていませんが、お母さんに影響を与える赤ちゃんの匂いは確かに存在するようです。

お日さまの匂い

干した布団はふんわり柔らかで、いい匂いがします。この布団の匂いを「お日さまの匂い」と表現することがありますね。

この匂いの正体は、汗や脂肪、洗剤成分などが、太陽の熱や紫外線によって分解されて発生するアルデヒド、アルコール、脂肪酸などの揮発性物質です。これは、カネボウの研究によって明らかになりました。

また、この匂いを嗅いだときの脳からはアルファ波が検出されるという実験も報告されています。つまり、お日さまの匂いを嗅ぐとリラックスできて落ち着くということです。

「お日さまの匂いは布団を干した後のダニの死骸の匂い」という都市伝説もありますが、この説は間違っているようです。

お寺の匂い

お寺ではお香をたいた独特の匂いがします。お香の原料として使われる天然香料は数十種類もあり、中には漢方薬や香辛料として使われているものもあります。主な原料は以下のようなものです。

桂皮(けいひ)
ニッキ、シナモンという名前でも親しまれている香辛料です。

大ウイキョウ
中華料理で使われることがある八角という香辛料です。

丁子(ちょうじ)
西洋ではクローブという名前で使われている香辛料です。

安息香(あんそくこう)
アンソクコウノキという樹木の幹を傷つけ、そこから抽出した樹脂です。

私たちが「○○の匂い」と聞いて思い浮かべることができるものについては、科学の光が当たり正体(成分)が明らかになってきています。

(藤野晶/高橋モータース@dcp)

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