エポック社の野球盤は、野球ボードゲームの金字塔ともいえる玩具です。皆さんの中にも、子供のころに遊んだという人は多いでしょう。では、この野球盤が誕生したのはいつなのかご存じでしょうか? また、人気に火をつけた「消える魔球」のギミックはいつ搭載されたものなのでしょうか? 野球盤が登場したきっかけや反響の大きかったシステムなど、その歴史を紹介します。
野球盤が生まれたのは1958年
『野球盤』は、1958年(昭和33年)に、現在の代表取締役社長・前田道裕氏の父である前田竹虎氏が、戦後の娯楽の王様だった野球に着目して開発した商品です。
当時は、アメリカに野球をモチーフにした「パチンコゲーム」はあったものの、「球を投げる」「球を打つ」といった、実際のプレーを模した対戦型の野球ゲームはありませんでした。
そこで前田竹虎氏は、バネを利用して球を発射し、ゼンマイを使ってバットを回転するといったギミックを盛り込み、野球の動作をリアルに再現した野球盤の1号機を完成させました。
ちなみに1958年といえば、プロ野球史上最高のスター・長嶋茂雄のルーキーイヤー。エポック社は1960年に玩具業界としては初となる野球盤のテレビCMを放送したのですが、出演したのは長嶋茂雄でした。
子供を熱狂させた「消える魔球」の誕生
野球盤の代名詞ともいえるギミックが消える魔球です。この機能が初めて登場したのは1971年発売のモデルです。
社長が当時大人気だった漫画『巨人の星』の「大リーグボール2号」(途中でフッと消えてしまう魔球)を見て、野球盤に取り入れるよう当時の担当者に命じたそうです。これまでにさまざまな新機能を誕生しましたが、「消える魔球機能」は特に市場の反響が大きかったといいます。
300万台以上売れた超人気モデル
野球盤が生まれた1958年から現在まで約70機種以上のシリーズが登場し、累計発売台数は1,400万台以上です。数ある野球盤の中で特に人気だったのが1974年に発売された「野球盤AM型」です。
このAM型から、ボタンを押すとバットが回転するワンタッチヒッティング装置が登場しました。また、一塁側にストライク、ボール、アウトカウントが分かるダイヤル式のカウンターが設置されています。このAM型は大ヒットし、10年間で累計300万台以上も販売されました。
ボールを打ち返すというシンプルなゲーム性はそのままに、グラウンドやスタンド部分はよりリアルに進化していきます。1982年発売の「パーフェクト野球盤A型」は、なんと人工芝とスピードガン機能を搭載。持っていると友達に大いに自慢できるハイグレードなモデルでした。
アラフォー世代だと、1988年の東京ドームの開場に合わせて発売された「ビッグエッグ野球盤」がドンピシャでしょう。ビッグエッグの名前のとおり野球盤全体がドームで覆われているのが特徴で、電動で球を打ち出す機能を搭載しているため一人でも遊ぶことが可能でした。
画期的なギミックが次々に登場
画期的なギミックといえば、2008年に発売された「野球盤ACE」に搭載された「雷神球(ライジングボール)」です。なんとホームベース直前でボールが浮かび上がります。かつて、消える魔球用のふたを使ってボールを弾き上げるというテクニックがありましたが、ついに公式のものとなったのです。
また、2010年の「野球盤スラッガー」には3Dバッティング機能が搭載され、打球が本物の野球のようにアーチを描いて飛ぶようになりました。2015年の「野球盤3Dエース」では、ボードの上を転がるだけだったボールが実際の投球さながらに空中を飛ぶ「3Dピッチングシステム」が登場しました。
2018年発売の「野球盤3Dエース モンスターコントロール」はストライクゾーン9コースを投げ分けできるようになり、戦略性がさらに増しました。
「野球盤3Dエース モンスターコントロール」には、より精密な投球を楽しめるように、球速と投球コースを瞬時に計測し、電光掲示板にグリッド表示するハイテク機能も搭載しています。実際に投球したボールのデータを集計し、試合終了後には全ての配球が確認できます。
今年4月には最新モデルの「野球盤3Dエーススタンダード 侍ジャパン 野球日本代表ver.」が登場しました。3Dバッティング機能、3Dコントリールピッチングシステムといった人気のギミックに加え、侍ジャパンチームのホーム&ビジターをイメージした選手ユニフォームカラーになっています。
誕生から今年で62年目を迎えたエポック社の野球盤。今もなお子供たちに愛される玩具であるのは、野球を見事に再現した初代のアイデアはもちろん、時代に応じた画期的なギミックを生み出してきた歴代の開発者の存在も大きいでしょう。子供のころに遊んだという人は、今の野球盤の進化にきっと驚くはずです。久しぶりに遊んでみてはいかがですか?
⇒野球盤公式ページ
https://epoch.jp/ty/yakyuban/special/
取材協力:エポック社
(中田ボンベ@dcp)
コメント