「オキシトシン」というホルモンが分泌されることが「愛情」「信頼」といった感情・情動に大きく関連していることが分かっています。今回は一名「愛情ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」についてご紹介します。
「オキシトシン」の働き
オキシトシンは20世紀初頭には発見されていましたが(1906年イギリスの薬理学者による)、その当時は、
・赤ちゃんへの授乳を促進する
という働きしか知られていませんでした。ところが、1990年代の半ばにネズミのつがいにオキシトシンを投与してみると、その絆が強まるという結果が観測されました。
これ以降、世界中でさまざまな実験が行われ、ただ単に上記のような作用をするだけでなく、オキシトシンは「愛情」「信頼関係」「仲間意識」といったものに深く関わる物質だということが明らかになってきたのです。
※オキシトシンは、末梢組織ではホルモンとして作用し、中枢神経内では神経伝達物質として作用します。
オキシトシンについて以下のようなことが分かっています。
・出産を促し、母乳の分泌を促進する
・ストレスを緩和する
・他人との関わりを積極的にする
・人間同士をより強く結びつける
・社交的にする
・仲間や自分の属するグループの人を助けたいと思わせる
・他人に対して寛容になる
・他人を思いやる気持ちにさせる
・睡眠を促す
オキシトシンはハグをしたり、なでたりといったスキンシップによっても分泌されることが分かっています。
恋人たちがべたべたと始終ひっついているのは、お互いの気持ちを結び付けるオキシトシンを分泌するからなのです。
また、自閉症患者において血液中のオキシトシンのレベルが低いことが知られていましたが、オキシトシンを吸入することで、自閉症患者であっても社交性が向上したり、他者への恐怖を和らげたりできることが分かった、という実験があります。
中にはこんな研究もあります。
人間がイヌをなでると、人間にオキシトシンの分泌が増えるだけではなく、イヌの方でもオキシトシンの分泌が増えます。
ヒトがイヌと暮らし始めたのは、3万年前~1万5,000年前といわれますが、お互いに仲良くするのに、また親密度を高めるために、愛情ホルモン「オキシトシン」が大きな影響を与えた、と推測されています。
これについては、2015年の麻布大学、自治医科大学、東京医療学院大学の共同研究で「ヒトとイヌの絆形成に視線とオキシトシンが関与」という論文も公表されています。
⇒プレスリリース「ヒトとイヌの絆形成に視線とオキシトシンが関与」麻布大学,2015.04.17
https://www.azabu-u.ac.jp/files/150417_press.pdf
オキシトシンは人間同士の愛情、信頼に深く関わるホルモンと考えられています。哺乳類一般に見られるホルモンですので、種族を超えた愛情、イヌやネコをかわいらしいと思う気持ち(逆にイヌやネコが人間の赤ちゃんを保護するような行動)にも、オキシトシンが関与しているのかもしれません。
(高橋モータース@dcp)
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