日本は100年以上続いている会社が世界一多い国です。会社だけではありません。江戸時代から続く「グルメ」や「嗜好品」を取り扱う名店たちも多く残っています。今回は、老舗として営業を続けている名店から厳選した6店を紹介します。
うなき蒲焼の老舗『やっこ』
うなぎはやっぱり江戸の味です。暴れん坊将軍の徳川吉宗の時代(享保年間:1716年~1735年)には、「江戸前」と言うと「蒲焼」のことを指していました。それだけ蒲焼は江戸を代表する名物だったわけです。浅草の雷門通りに面している『やっこ』は寛政年間(1789~1800年)創業で200年以上も営業しているうなぎの名店です。勝海舟とジョン万次郎が二人連れでお店にやって来たこともあるそうです(笑)。話の種に一度は行くことをお薦めしますが、ちょっと高価です。「当店のスタンダート」と紹介されている「うな重 梅」は3,150円。江戸の庶民の味だったうなぎも今や高級料理になっています。トホホ。
軍鶏鍋の『ぼうず志ゃも』
江戸で軍鶏鍋というと池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』を想像する人も多いのではないでしょうか。鬼平には美味そうな料理がたくさん出て来ますが、中でも軍鶏鍋を名物とする料理屋『五鉄』の存在感は格別です。両国、回向院の隣りにある『ぼうず志ゃも』は天和年間(1681~84)に創業といいますから、300年以上も営業しているお店です。軍鶏を素材にしたコース料理一本しかなく、サラダから始まり、軍鶏の肝焼き、軍鶏刺し、軍鶏鍋、ご飯と続きます。軍鶏鍋は秘伝の味噌仕立てですが、四角い鍋が出てくるのでビックリします。
浅草餅と揚げまんぢゅう
甘味はいかがでしょうか。浅草というと人形焼き! かもしれませんが、美味しい「浅草餅」があります。一見ごく普通のお餅に見えますが、歴史の重みが違います。浅草の『金龍山浅草餅本舗』は初代初代桔梗屋安兵衛が延宝3年(1675年)伝法院前にお店を出したのがそもそもの始まり。実に337年もの間、お客さんに愛されてきた名物なのです。昭和33年(1958年)から売り出した「揚げまんぢゅう」もとても美味しく、これまた名物になっています(すでに54年の歴史!)。
由来が面白い、絶品の甘酒
神田明神の甘味処として有名なのが『天野屋』です。本当に上品な甘さの甘酒で、ほっとする味。実は甘酒は、江戸の昔には夏の飲み物でした。天野屋は弘化3年(1846年)創業で166年も続いています。天野屋さんはその始まりが面白く、初代は元々京都丹後の人であったのですが「敵討」(かたきうち)のために江戸へ出てきます。神田明神は「江戸総鎮守」とされた信仰を集めた神社で、多くの参詣者で賑わっていました。ここで見張っていればいつか仇に巡りだろうとお店を出したのです。結局、敵討は果たせなかったのですが、そのおかげで私達は今も美味しい甘酒を飲めるわけです。
味わい深い羽二重団子
甘味をもう1つ。素朴が味がたまならない日暮里の「羽二重団子」(はぶたえだんご)です。今では株式会社になっており株式会社羽二重団子ですが創業は文政2年(1819年)。初代庄五郎が芋坂(旧王子街道)に『藤の木茶屋』を出したのがその始まりとされています。餅のきめがとても細かく「まるで羽二重のようだ」と称されたのがそのまま名前になりました。創業以来、醤油味と餡の2つのみ。193年支持されている味なのです。
もぐさの名店『釜屋もぐさ本舗』
最後にちょっと変わったものをご紹介します。「もぐさ」です。最近では『せんねん灸』のような簡易なものが発売されていますが、お灸と言えばもぐさを手でつまみ、患部に盛って線香で火をつけるものでした。「お灸をすえるよ!」と言えば子供の叱り言葉ですね。日本橋小網町にある『釜屋もぐさ本舗』は創業がなんと萬治2年(1659年)。350年以上も商いを続けている老舗中の老舗です。国内産のもぐさ100%使用で、最上級のもぐさが購入できる名店です。
江戸時代の江戸から東京へ。江戸の開府から410年以上経ついまも、連綿と続いている名品、名物、名店がまだまだ数多くあります。200年、300年と継承されているものをいまでも手軽に楽しめるのもまた日本の魅力です。機会があればぜひ、江戸から続く老舗の空気感を体感してみてはいかがでしょう。
(牧瀬サイクルズ@dcp)
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