和食の基本は「ご飯」。ご飯を食べて育つ日本人は「お米」を大事にしてきました。戦争のために食うや食わずの目に遭った世代は、特にお米(そして食べ物全般)を大事にする気持ちが骨身に染みています。その気持ちは子どもに対するしつけになって現れ、そのまた子どもにも受け継がれていくもの。
ご飯を一粒残らず食べることこそ美徳でありマナーだと、子どもの頃にたたきこまれた人は多いでしょう。そこで今回は「ご飯粒を残すと親に言われたこと」を聞いてみました。
生産者の苦労を考えよう!
「『お百姓さんが汗水垂らして作ったものなんだから残したら罰が当たるよ』と両親から言われた」
「いつも言われていたのは『米粒一つ一つを農家の人が流した汗水の数だと思って食べなさい』」
田んぼのメンテ、田植え、雑草の除去、日照・気温・台風への気配りと対処、稲刈り、脱穀などの工程をへてお米ができるまで、農家の皆さんのご苦労は大変なものです。その苦労を考えると一粒たりとも無駄にするべきではありませんね。
残さないのが感謝の印!
「残さず全部食べるのがご飯を作ってくれたお母さんへの感謝の気持ちを表すこと、と父にしつけられた」
「お米を作った農家の人、ご飯を作ってくれたお母さんに感謝の気持ちを込めてご飯粒一つ残さず食べなさい、というのが我が家の教育だった」
ご飯粒の一つも残さず食べることが「感謝の意を表すること」だというのは分かりやすいかもしれません。自分がご飯を作る方に回ってみると、「全部食べてくれた」のは確かにうれしいことですからね。
恵まれない人もいる!
「『世の中には食べたくても食べられない人もいるのよ。食べられることに感謝してご飯の一粒も残してはいけません』と言われていました」
確かにおっしゃるとおりですね。日本には「もったいない」といういい言葉があります。ご飯粒一粒でももったいないと思い、食べられることに感謝するべきでしょう。
残すのは見苦しい!
「お茶碗にご飯粒を残すのは見苦しい。汚らしく見えるから残さずきれいに食べなさい、とお母さんに言われた」
確かに、お茶碗にご飯粒が残っているとあまり見栄えの良いものではありません。「汚らしく見えるか」は個人の見解かもしれませんが、そのように言って「残さず食べること」を習慣付けようとしたのでしょう。
体に影響が出る!?
「ご飯粒を残すと目がつぶれるよ、と言われた」
少数ではありましたが、「目がつぶれる」と言われた人もいらっしゃいました。「神様」や「農家のご苦労」といった理由ほどメジャーではありませんが、「目がつぶれるから残さないように」というしつけの方法もあったようです。
神様がいる!
「『米粒の中には神様が住んでいるから粗末にしてはいけない』と母が言っていました」
「『ご飯一粒一粒に7人の神様がいる。だから残したらあかんよ』と、母よりも祖母がよく言っていました」
日本では八百万の神様がいらっしゃいます。なにせトイレにも「女神様がいるんやで」ですから、当然お米の粒の一つ一つにも神様がいらっしゃるのです。残してはいけません。どんな宗教にも食べ物に感謝して粗末にしないという教義はあるでしょうね。
家庭でのしつけは「ご飯粒一粒も残さないように」というのが一般的でしょうが、実は日本での食材の無駄は年間1,800万トンもに及ぶのです(出典:ドキュメンタリー映画『もったいない!』)。戦争による飢えを経験したことのない世代の方が多くなっていますが、日本の良きしつけはこれからも続いてほしいものですね。もちろん言い方にはいろいろ工夫が必要かもしれませんが……。
(松田ステンレス@dcp)
コメント