「自臭症」とは? 「自分はくさいのでは」という考えにとりつかれてしまう

自分が人にくさいと思われているのではないか」という考えに取りつかれ不安に感じてしまう、という人がいらっしゃいます。誰にでもあるような話なのですが、この不安が亢進すると危険です。

全く周囲の人はそう思っていなくてもに「いやそうに違いない」と自分で思い込んでしまい、不安と恐怖にさいなまれてしまうのです。このような不安症を指す言葉に「自臭症」があります。

「自臭症」といわれる精神的な疾患(mental disorder:メンタル・ディスオーダーの訳)についてご紹介します。

「自己臭恐怖」は「対人恐怖症」の変異型

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によれば、いわゆる「自臭症」は、「自己臭恐怖」という名称(分類)となっています。

同マニュアルによれば、自己臭恐怖は「対人恐怖症』の中の1つの変形で、身体から相手を不快にさせる臭いがあるとの恐怖によって特徴づけられる(また、嗅覚関連づけ症候群とも名づけられている)」とされます。

⇒引用元:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』「他の特定される強迫症および関連症/他の特定される強迫性障害および関連障害」P.261

主な症状としては、

・自分のにおいに過度に敏感になる
・自分のにおいが相手を不快にしているのではないかと過度に気にする
・相手の(鼻を押さえるなどの)動作を過度に気にする

といったものが挙げられます。

また「対人恐怖症」は、同マニュアルによれば、

taijin kyofusho“(日本語の「対人恐怖症」が採用されている:筆者注)は、社会的交流において、自己の外見や動作が他者に対して不適切または不快であるという思考、感情、または確信によって、対人状況についての不安および回避が特徴である文化症候群である。

⇒引用元『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』「対人恐怖症」P.831

とされています。

つまり、対人恐怖症は「他の人に迷惑を掛けてはいけない」という意識の強い日本人に顕著な、文化的ともいえる疾患と捉えることができるのです。

対人恐怖症の変異型として、この「自己臭恐怖(嗅覚関連づけ症候群)」、また「赤面恐怖」といったものが挙げられますが、どれも「文化に関係した2つの型を含んでいる」(同マニュアルより)のです。

その型とは以下のようなものです。

1.過敏型
対人交流に関して極度の社交過敏性と不安を持つ

2.不快型
他人に不快感を与えることに大きな懸念を持つ

⇒引用元『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』「対人恐怖症」P.831

つまり相手がどう思っているのか」という社会的な観点がその人を不安にさせるというわけです。

自分で思い込んでしまうので治療が難しい

「自己臭恐怖(嗅覚関連づけ症候群)」の怖いところは「自分で思い込んでしまう」点です。

強く思い込んでいる人は、「あなたはにおいませんよ」「計測機器で測ってみてもそんなにおいは出ていませんよ」と第三者に言われても、それを簡単には受け入れられません

たとえ医師の診断を受けても「いや、先生はああ言っているが、自分はくさいんだ」と思ってしまうと、不安からなかなか抜け出せないのです。また強い不安から「うつ状態」に進行してしまうこともあります。

ですから「あなたは何かにおうね」といった言葉は、たとえ冗談であっても、どうか軽々に口にしないでくださいそのひと言が、言われた人を精神的な疾患に追い込んでしまうことがある、と考えてください。

(高橋モータース@dcp)

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