なぜ死因に「肺炎」が多いのか?

死亡記事をニュースサイトなどで見ることがありますが、死因について「肺炎が多いなぁ」と思ったことはありませんか? 「肺炎」は重症化することのある病気ですが、肺炎が死因として多くなるのには理由があります。

「肺炎」とはどんな病気?

肺炎は、主に病原微生物が肺に入り、炎症を引き起こす疾患です。肺炎の症状としては、

・発熱
・頭痛
・悪寒
・咳(せき)や痰(たん)
・倦怠(けんたい)感
・関節痛
・呼吸困難

といったものが挙げられます。

症状としては「風邪」に似ていますが、風邪の場合は炎症を起こすのが主に喉や鼻などの「上気道」の部分なのに対し、肺炎では気管の奥、主に肺の肺胞内で炎症が起こります。

そのため、「咳や痰」「発熱」といった症状はより深刻なものになるのです。肺炎が重症化した場合には、呼吸困難によって死に至ることもあります。

肺炎を引き起こす主な病原微生物は以下のようなもので、このような病原微生物の感染によって引き起こされる肺炎を「感染性肺炎」と呼ぶことがあります。

●肺炎を引き起こす「細菌」
肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ、レジオネラ菌

●肺炎を引き起こす「ウイルス」
インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス

●肺炎を引き起こす「そのほかの病原微生物」
マイコプラズマ、クラミジア

病原微生物の感染によらない肺炎もあります。

●過敏性肺炎
ほこりやちりなど(有機物・無機物)を習慣的に吸い込むことによって、それがアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)となり、肺に炎症を起こしてしまう肺炎です。アレルギー反応による肺炎というわけです。過敏性肺炎の約7割が「夏型過敏性肺炎」といわれます。これは、夏に繁殖しやすい「トリコスポロン」というかびの一種が引き起こすもので、そのため冬になると症状が現れなくなります。

●間質性肺炎
肺胞と肺胞の間に「肺胞間質」という、壁に当たる組織があります。ここに炎症が起こるのが間質性肺炎です。普通は弾力のある組織なのですが、炎症が起こると組織が硬くなる線維化が進み、呼吸機能が低下します。膠原(こうげん)病、薬剤、放射線、粉じんの吸入など原因はさまざまとされ、明確には分かっていません。また、原因不明の場合は「突発性間質性肺炎」と呼びます。

肺炎には「発症場所」による分類もある

肺炎の分類には、感染によるものか否かといったもののほかに、「どこで発症したのか」があります。

●市中肺炎
普段の日常生活を送る中で発症した肺炎です。ほとんどが病原微生物の感染により罹患(りかん)します。

●院内肺炎
(ほかの病気で)入院している間に発症した肺炎です。入院後約3日以内に発症した肺炎は「総称して」院内肺炎と呼ばれます。

重篤な症状になる可能性が高いのは「院内肺炎」です。その理由の一つとして、病院に来ているわけですから、そもそも本人の体が弱っているという点があります。

また、もう一つの理由として、病院内には抗生物質に耐性のある菌など、感染すると非常に厄介な病原微生物がいる可能性があることが挙げられます。

例えば「ペニシリン耐性肺炎球菌」は、肺炎球菌を退治してきたペニシリンが効きにくい「肺炎球菌」です。

ペニシリンへの耐性を獲得した、いわばバージョンアップした肺炎球菌で、このような菌に炎症を起こされると治療も難しくなるのです。また侵されるのは肺だけとは限りません。ペニシリン耐性肺炎球菌感染症では「髄膜炎」「敗血症」などの重症化があり得るのです。

高齢者に多い「誤嚥性肺炎」

上記のように、肺炎はどこで罹患・発症したかが分類になるほど重要視されています。これは、ほかの病気で入院しているのに後から肺炎を発症(併発)することが多いからでもあります。

高齢者に多いのは「誤嚥(ごえん)性肺炎」です。これは、

●誤嚥性肺炎(嚥下(えんげ)性肺炎)
口から入った食べ物や唾液(だえき)が間違って気管に入り(これが「誤嚥」です)、唾液や食べ物などと一緒に入ってきた細菌が肺で炎症を起こします。口腔内の常在菌である「嫌気性菌」「肺炎球菌」が原因となることが多いです。

というもの。正月になると「お年寄りがお餅を喉に詰め……」みたいなニュースがありますが、加齢とともに飲み込む力が衰え、誤嚥は増えます。しかも高齢者の場合、炎症が重篤化しやすいので、死亡率も高いのです。

ほかの病気の治療をしている間に、誤嚥性肺炎を発症してこれが重症化、死に至るケースが多くあります。実は、これが「死因に肺炎が多い理由」の一つなのです。

例えば、がんの末期治療を受けている患者がいらっしゃるとします。体が弱っているので、誤嚥性肺炎になると重篤な事態になってしまうことが多いのです。そして誤嚥性肺炎で亡くなると、直接の死亡原因となった疾患はあくまでも「肺炎」。がんも発症していたのですが、「死因:肺炎」となるのです。

ですので「死因:肺炎」と一口にいっても、元々はほかの病気で入院していたのでは? といった点には留意する必要があるのです。

(高橋モータース@dcp)

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