「広告医学」(AD-MED)とは? 自主的に人が健康になるようにする

広告医学AD-MED)という言葉をご存じでしょうか。これは横浜市立大学のグループが提唱した概念で、「デザイン」「コピーライティング」などの広告業界の視点を取り入れ、医療問題の解決を行おうという考え方を指しています。医療におけるコミュニケーションについての新たな視点を提言するものです。

「広告医学」は人々が自然に健康行動を行うように促すための概念

医療が現代のように発達する以前の人間の主な死因は、結核や肺炎、インフルエンザ、ペストなどといった「感染症」でした。それが現在では多くの感染症は治療が可能になっています。しかし、その代わりに「生活習慣病」が原因で命を落とす人が増えています。

生活習慣病を治すことは難しく、日常生活を改善して予防に努めることが大切なのです。しかし、医師が生活習慣病の予防のために「毎日適度な運動をしましょう」とか「栄養バランスの良い食事をしましょう」と指導をしても、患者を含む人々の意識を変えるのは難しいというのが現状です。

そこで、横浜市立大学の武部貴則准教授は、広告業界の「デザイン」や「コピーライティング」に注目しました。広告業界では、さまざまな広告を使って一般の人々に「購買」などの行動を起こさせています。この広告の視点を医療の現場に取り入れれば「自然に人々の行動を変え、健康的な生活を送るようになる」と考えたのです。こうして、「広告医学」という概念が横浜市立大学のグループによって世界で初めて提唱されました。

従来の医療現場では、医師が患者の検査結果を見ながら「コレステロール値が高いから運動しなさい」とか「血圧が高いから塩分を控えましょう」という指導をしてきました。

しかし、広告医学では、直感的に「運動しようかな」とか「今日はラーメンを食べないでおこう」と思えるようにアプローチするわけです。このアプローチに、分かりやすく遡及力のある広告業界の手法を用いるわけです。

「広告医学」の実例

「広告医学」の考えの基本は「人々が自分で考えて健康的な生活を送るようにする」ということで、以下のような実例があります。

●「メタボリックシンドローム」対策のパンツ
「メタボリックシンドローム」の人を対象に「体形と体調のどちらが大切か?」というアンケートを取ったところ、7割の人が体形と答えました。この結果から、病気のリスクよりも体形が変わるデメリットを訴えた方が効果があるのではないかという発想が生まれたのです。

そして開発されたのが「ALERT PANTS(アラートパンツ)」という商品です。これは、標準の体形の人がはくと黒いのですが、メタボリックシンドロームの基準となるウエスト85cmを超える人がはくと繊維が伸びて色が変わります。ウエストが太くなるほど色は薄くなり、「太っている」ということが一目で分かるようになっています。

●上りたくなる階段
健康のためには「歩く」ことが良いとされています。一般的にも「エスカレーターではなく階段を使う」とか「通勤時に1駅分歩く」などといわれていますね。しかし、歩くべきとは思っていてもなんとなく楽ができるほうを選んでしまいがちです。

そこで広告医学プロジェクトは横浜市と連携し、「上りたくなる階段(健康階段)」を開発したりしています。そして横浜シーサイドラインの協力を得て、金沢八景駅と市大医学部駅にこの階段を設置しました。この階段は、立ち位置によって見え方が変わるような絵が描かれており、視覚的に楽しみながら上れるというものです。

●使い過ぎを抑え、香りを引き出すしょうゆ差し
和食では味付けに「しょうゆ」を使うことが多く、塩分の取り過ぎの原因にもなっています。たとえば刺し身や冷ややっこはしょうゆで味付けをしますが、一般的なしょうゆ差しではしょうゆを使い過ぎてしまいます。1滴ずつ出せるようなしょうゆ差しもありますが、物足りないといって結局たくさんしょうゆを使ってしまう可能性があります。

そこで開発されたのが、しょうゆを霧状にして噴射するしょうゆ差しです。霧状になるためしょうゆの香りも立ち、使い過ぎを抑えられるようになっています。

「生活習慣病」は発症すると健康体に戻るのが困難です。しかし、「広告医学」のアプローチでは「人々が自発的に健康的な生活を送るようにする」ことを目指すのです。「広告医学」はやがてもっと身近なものになるのではないでしょうか。

⇒参照:『広告医学(AD-MED)』公式サイト

(松田ステンレス@dcp)

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